《MUMEI》

「那加、どうしたその指──」

「‥‥‥別に」

「切ったのか‥?」

「‥‥‥たぶん」





針で刺した、

なんて言えないし‥。





「大丈夫か?」

「ど‥どって事ないわよ‥」





日向がこっちを向いてるだけで、

心臓が飛び上がりそうになる。





「‥‥‥それで‥?」

「?」

「今日、随分来るの早いじゃない。いつもは5時位なのに」

「たまたま6限が早く終わって──」

「ふぅん‥」





だから早かったんだ。





「──遊び、行ったりしたくないの?」

「遊び‥?」

「カラオケとか‥ゲームセンターとか」


「───────」

「‥? 何がおかしいのよ」

「那加が独りでいるのに──何で俺が遊びに行かなきゃならないんだ?」

「あたしといても‥する事ないじゃない」

「あるだろ?」

「どんな‥?」

「一緒にジュース飲んだり──プリン食べたり」

「楽しいの?」

「──ぁぁ」





日向はそう答えて、

紙パックを取り出した。





ニコッ、

とあたしに笑いかける。





「飲むだろ? 一緒に」

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