《MUMEI》

見慣れた、

紙パックのジュース。




ピンクの文字で、

桃≠チて書いてある。





「───────」





ここに来て初めて日向が買って来てくれたのも、

これだった。





『那加、ジュース飲むか‥?』

『‥いらない』

『桃、だけど──』

『桃‥?』

『那加、好きだったろ?』

『ちっちゃい頃はね』

『今は嫌いか‥?』

『そうでもないけど‥』





何となく、

まだあの頃は乗り気じゃなかった。





嬉しいのか、

それすらも分からなくて。





でも何でか、

受け取る時に触れた日向の手のあったかさにだけは、

安心したのを覚えてる。

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