《MUMEI》 遅刻したとは思えない位に堂々と‥ 珠季はこっちに向かって来た。 席に着くと 何食わぬ顔で教科書を開く。 ノートは 依然として机の上にある。 「‥シズル」 「ん‥」 「中、見てねーだろーな‥」 「当たり前じゃないか。人の物なんだし──」 「‥‥‥‥‥‥‥」 「可愛くなったね」 「はッ!?」 珠季が叫んだ途端 クラス中がシーンとなった。 先生までもが 驚いて目をパチクリさせている位だ。 「珠季‥少し音量を抑えた方がいい‥」 「‥分かってら」 流石に恥かしくなったのか── 呟くように 珠季は答えた。 それから また教科書に向き直る。 けれど 集中出来ないのか── 上の空なのか──‥。 珠季‥ 教科書が逆様だぞ‥? 前へ |次へ |
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