《MUMEI》

いつの間に彼女は‥

あんなにも速くなったんだ‥?

僕が鈍ったのか‥?

‥違うな‥。

なら何故だ‥?

彼女は1度だって──

僕を越した事は無かったというのに‥。

これは

負けてはいられないぞ‥。

「‥ん?」

「はぁっ‥はぁ──やっと追いついた‥」

「麻木‥?」

大丈夫なのか‥?

かなり息切れしているようだけど‥。

「速いね2人共──」

「今は珠季が有利だけどね──」

「ぁ、ほんとだ──」

「フ‥、まさか彼女に越されるとは思わなかったよ──」

「珠季ね、はぁ‥、頑張ってたんだよ?」

「‥『頑張ってた』‥?」

「うん。休みの日とかね、朝公園で走ったりしてたんだ──」

「珠季が‥か?」

「そうだよ──。あの徒競走の後から」

「!?」

──知らなかった。

彼女は

僕の知らない所で‥

頑張っていたんだ。

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