《MUMEI》









「冷えるから病室戻ろう」




「……はい」



加藤君は立ち上がったが


「おっ…、」




よろめいた加藤君を咄嗟に支える。



「すみません、なんだか…、ふらつく…」










遠慮する加藤君を強引におぶり俺は病院に入った。



何人かにじろじろ見られたが無視してエレベーターに乗り込む。



俺の肩口に顔を擦り寄せて…、恐らく顔を隠しているのだろう。




ノーメイクでもあまり顔の変わらない子だからその方がいいだろう。








「すみません…、ありがとうございました」



「いや、それよりすっかり冷えちまったなー、看護師さんにお湯貰って足あっためるか…」




俺は氷の様に冷えた加藤君の足に触れながらそう言った。




「……ちょっとまってな」











「熱くねーか?」




「はい、あの……、すみません…」



「いーから気にすんな」



「はい……」




熱い湯で絞ったタオルで足を温めてやる。



本当は風呂でも入っちまえばいーんだろうが、貧血で真っ青な加藤君には無理な話だろう。




あっという間に冷えたタオルをバケツに入れてまた絞る。



洗面器じゃ一回で冷めるからバケツで湯を貰った。



ちょっと看護師にびっくりされたけど…。





何度か繰り返して、いくらか暖まったところでスエットを下げた。



布団を丁寧に直してやり、顔色を伺う。




さっきまで真っ青な顔をしていたがだいぶ色みをおびていた。





「ありがとうございました、すみません伊藤さん…」

「あーだからすみませんとか無しだって!ちょっとお湯捨ててくっからよ」

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