《MUMEI》 その家は、ちょうど私の家の裏にあった。 古い洋風の家で、屋根や壁には、蔦がはっている。その葉、一枚一枚が、濃い緑色に染まっていた。 焼け付くような陽射しに、目を細める。 少女は、二階の窓から、こちらを見ていた。 長く、色の薄い髪。白い肌。長袖の白いワンピース。私より、10歳ほど上だろうか。 私は、鼓動が跳ねる音を聞いた。そのまま、それは加速していく。 少女は、ゆったりと微笑んだ。 私は彼女から、目がはなせない。年上の、それもかなり美しい少女に、微笑まれたのだ。 私は、おずおずと手を挙げる。そして、蝉を彼女にそっと見せた。 前へ |次へ |
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