《MUMEI》

その家は、ちょうど私の家の裏にあった。
古い洋風の家で、屋根や壁には、蔦がはっている。その葉、一枚一枚が、濃い緑色に染まっていた。
焼け付くような陽射しに、目を細める。



少女は、二階の窓から、こちらを見ていた。
長く、色の薄い髪。白い肌。長袖の白いワンピース。私より、10歳ほど上だろうか。


私は、鼓動が跳ねる音を聞いた。そのまま、それは加速していく。



少女は、ゆったりと微笑んだ。


私は彼女から、目がはなせない。年上の、それもかなり美しい少女に、微笑まれたのだ。



私は、おずおずと手を挙げる。そして、蝉を彼女にそっと見せた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫