《MUMEI》

‥速い‥。

追い付くどころか

引き離されている‥。

「どーした静瑠ー? 何なら外野で見ててもいーんだぜー?」

「誰が観念なんかするものかっ、これはまだ僕の本気じゃ──」

「もしオマエがアタシに勝ったらさぁ、いいもんやるよ♪」

「‥?」

もしとは何だ‥

失礼な‥。

僕が君に──

負ける筈が無いだろう‥?

‥もうしないだろうと思っていた勝負。

けれど

何かに付けて──

僕らは張り合っている。

まだ僕らは‥

ライバルなんだろうが‥?

「おーい、どーしたー?」

「どッ‥どうも‥してはいないよ」

それにしても珠季──

君はどこまで速くなるんだ‥?

「──────‥」

今更だけど──

君が僕に追い付こうともがいていた苦難が

分かったような気がする──‥。

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