《MUMEI》
記憶喪失
―ピンポーン―


「ん…」


―ピンポーン ピポピポーン―


「あ〜もう!誰よ?うっさいわねぇ!!」

何度もしつこく鳴るチャイムで加奈子は目を覚ました。

―ドンドンドン!!―

『加奈子〜、いないのかぁ?加奈子ぉ。』

玄関の向こうから、聞き覚えのある声が聞こえた。

「シュウ…ちゃん?」

加奈子は起き上がり、まだボーっとする頭を摩る。

『俺だよ、修二!』

「シュウちゃん!!」

完全に意識が戻った加奈子は、玄関へ走った。

『お〜い!加奈…』
―ガチャ!―
「シュウちゃん!!」
「なんだ、いたんなら早く出ろよ〜。」
「ごめん、寝てた…」
「寝てたってお前、もう昼だぜ?」
「え…?」

私、いつの間に寝てたんだろう…

「まぁ、いいや!中入っていい?」
「あ…え…?」
「昨日のやり直し!ホラ!」
修二はそう言うと、持っていたスーパーの袋を加奈子に見せた。

「昨日…やり直し…」

そうだ!昨日、ドタキャンされたんだ。
それで私……


それで…?
どうしたんだっけ?



「お〜い!どした?ボーっとして。」

ハッ!!

修二に覗き込まれて我にかえる。

「何でもない!もう次ドタキャンしたら許さないんだから!!」
「はいはい。」

いつもと変わらぬ様子の加奈子の頭を、修二はいつもの様にナデナデすると、ズカズカと中へ入って行った。

「お邪魔しま〜すっ!」





私、夕べの記憶ない…?


加奈子は頭に靄がかかるを感じながらも、何食わぬ顔で修二の後に続いた。

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