《MUMEI》

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また真っ暗な町に降り立ったみたいだ。



目に移るのは、何処か懐かしい田舎の風景に、消えかけの街灯


その奥には赤い空。


─急げ!!─

脳が命令を下す前に、身体はもう走りだしていた。


いつまた目が覚めるか分からない。
それまでに、あの写真の少年を見つけ出さなければ。



息を切らし、やっとたどり着いた。

相も変わらず気味が悪い。

「よし!」


貴士は自分に気合いを入れて、警戒しつつ屋敷に近づいていった。

錆付いた鉄の門を抜けると、入り口に向かう石畳が続いている。

その周りには広い庭が広がっていた。

ただ悲しくも、植物など一切見当たらない。


貴士は想像した。

もしも今ここが廃棄でなかったら、きっと薔薇なんかが綺麗に咲いているのだろう、と…



それにしても、どうしてこの屋敷だけ、こんなに荒れ果ているのだろうか?
他の民家や商店は、古いが決して荒れてはいないのに。


「あ…」

そんな事を考えていたら、いつの間にか扉の前まで来ていた。

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