《MUMEI》
サンタクロース
詳しい事は聞かされていない。
きっと、まだ僕が幼かったからだと思う。



『順平君は、もしかしたら神様の子かもしれないね。こんな幸福な日が誕生日なんだから!!』



毎年、ジングルベルと共に僕の誕生日がやってくる。

そのたびに、園長先生にそう聞かされていた。

でも、大きくなるにつれ、僕はクリスマスの日に、実の親に捨てられたのだと理解していった。


それでも、悲しいとは思わなかった。

ただの一度も。

園長先生も他の先生も、施設で暮らした仲間たちも、皆優しくて、毎日が楽しかったから。


それは今でも変わってないみたいだ。

施設の中から、子供達の楽しそうな笑い声が聞こえてくるから。



「何かご用意ですか?」

「うわっ!?」


過去の思い出に浸りすぎて気付かなかった。

後ろから不意に声を掛けられて、思わず飛び上がってしまった。


その恥ずかしさから、俯き加減に声のした方を振り向くと、まるでサンタクロースのようなお爺さんが立っていた。


「あ…」

「おや?君は確か…順平君?そうだ、順平君だろう!?」


サンタクロースのお爺さんは、嬉しそうに僕の手を握りしめた。


「お久しぶりです、園長先生。」


言った瞬間、懐かしさで胸が溢れた。

前へ |次へ


作品目次へ
感想掲示板へ
携帯小説検索(ランキング)へ
栞の一覧へ
この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです!
新規作家登録する

携帯小説の
無銘文庫