《MUMEI》

「‥‥‥桐生」





芙原さんが僕に声をかけてきたのは、

本当に突然だった。





僕は美術室で、

いつもより遅くまで残って絵の仕上げをしていた。





そんな僕の所に、

突然現われた芙原さん。





‥どんな事を言われるんだろう‥。





僕は、


何だか恐くなった。





芙原さんは、

僕が描いている絵をジッと見つめて‥

珍しそうな顔をした。





「変わった絵だな」

「蓮のイメージなんだ。花びらに少し陰影を持たせて──」

「‥そのスケッチブック、お前のか」

「ぇ、うん‥。ぁ──待って‥!」





止めようとしたけど、

遅かった。

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