《MUMEI》

『騒がせて悪いな…。』



唯一、兼松に聞き覚えのある声が唸った。



兼松は恐る恐る声のした方へ顔を向ける…。



其所には、菖蒲の間に遅れて入ってきた一人の男が立っていた。



それは黒紫色のスーツに身を包んだ、額に刃傷のある男だった。



『久しぶりだな…"実松"…。』



兼松の目が恐怖におののく…。



視線の先に、道風会直系団体幹部…藤城が、ズボンのポケットに手を突っ込んで、兼松を睨んでいた…。

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