《MUMEI》 灰重厚そうな木製の扉。 貴士はそのメッキの剥がれたドアノブに手を掛けた。 心臓が、今まで経験した事のない程、バクバクしている。 まるで身体全体が心臓になってしまったみたいに。 「い、行くぞ!」 貴士は意を決してノブを回した。 すると、一体どうしたというのか ギィィっという不気味な音と共に、ガラガラと目の前にあったはずの扉が、貴士目がけてくずれ落ちてくるではないか。 「うわぁ!?」 貴士は寸でのところでそれを避ける。 砂ぼこりが辺りに舞う。 とてもじゃないが、目なんて開けていられず、貴士は屈み込みながら暫く目を瞑っていた。 「危ねぇ…」 落ち着いたところを見計らって立ち上がると、恐る恐る目を開けた。 「なんだ、これ。灰…?」 すると、そこにあるはずの崩れた木材は、何故か灰と化していたのだ。 「どうなってんだ?」 何故? どうして? ただ疑問だけが、貴士の頭を支配する。 灰が風に乗ってサラサラと貴士に向かって吹いてきた。 その風が妙に暖かい。 ビュー、ビュー… 徐々に風の勢いがまし、またその温度も徐々に高くなってくる。 いよいよ怖くなり、貴士はズリズリ後退りする。 が、遅かった。 ゴォッ!! 灼熱の凄まじい強風が、貴士を天高く舞い上げたのだ。 前へ |次へ |
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