《MUMEI》
個人病院
 怪我を負った二人は近くに小さな個人病院を見つけた。
とりあえず、鍵を壊して中へと侵入する。

「まずは、消毒しなきゃね」
ユキナが言いながら、診察室や薬品庫を手際よく荒らしていく。

どうも彼女は、こうやって家捜しするのが好きなようだ。

薬の捜索はユキナに任せ、ユウゴは院内に誰か潜んでないか探すことにした。
腕は痛むが、動いている方が気が紛れていい。

 病院は二階建てで、一階には診察室などがあり、二階は入院患者用の部屋があった。
といっても、部屋は三部屋でベッドは各部屋、四床しかなかった。

一通り回ってみたが、二階には誰もいないようだった。
布団のないベッドが気味悪く並んでいるだけ。
おそらく、布団はすでに誰かに盗られてしまったのだろう。
荒らされた形跡がそこかしこに見える。

この分だと、薬も残ってないかもしれない。

そう心配しながら、ユウゴは一階へ降りた。

「ねえ、ユウゴ!」
ユキナの声が聞こえ、彼女のいる方へと向かう。
「あったか?薬」
ユウゴはその部屋に足を踏み入れた途端、ア然とした。

「おいおい、なにやったんだよ、お前は」
「わたしじゃないって!」
ユキナは心外だというように、ユウゴを睨んだ。
「わたしが来たら、もうこうなってた」
ユキナが指したのは、床の上。

 部屋には幾つもの棚が並べられた棚があったが、おそらくそこから落ちたのであろう薬品が、床一面に散乱していたのだ。

 割れた瓶からは液体が流れ出ている。
明らかに今割れたばかりといった雰囲気だ。

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