《MUMEI》

「俺に言いたいことは?」


『……父親に会った。』


「……海?」

俺達に父親のハードルは高すぎる。


『うん、行ってきた。』


「珈琲飲んだ?」


『海行く前にね。喫茶店で話してた。』


「いっぱい話した?」


『よく、覚えてない。元気かって言われたから、うんって。』

初めて話すような感覚だったのだろう。


「そう、
そのうち、俺も挨拶しなきゃだな。」


『いいよ、そういうの。』

ちょっと、和んだか。


「一人で会えたんだ?」


『ん。電話きたかな、なっちゃんから。』

落ち着いてきたようだが……俺からは嫉妬心が芽生えてきた。


「よし、免許取れたら先ずは海だな。」


『楽しみにしてる。』


「船もいいな。」


『免許取る?』


「まさか。」

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