《MUMEI》

「‥‥‥桐生」





芙原さんが話し掛けて来たのは、

校門を出てすぐの事だった。





「‥お前、何であたしの事好きなんだ」

「ぇ──」





何で‥?





「あたしみてーな男勝り‥何で好きになったんだよ」

「───────」





どうしてかなんて、

考えた事ない。





気付いた時には、

もう好きになってたんだ。





だから──

理由なんて考えたことないんだ。





好きになるのに──

理由なんているのかな。





「───────」





‥分からないや。





でも‥

『好き』ってきっと──

辛いけど、

いい事なんだと思う。





だって──

こんなに幸せな気分になれる時があるんだから──。

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