《MUMEI》
「やば、静流から30件着信と11件メール入っていたよ」
「早く返事してあげなさい」
若菜と表通りを歩く。
車が多く出入りするところの方が安全だ。
「う、振動きてる」
電話を受信し、バイブが手元で震えている。
「早くー」
若菜は促す。
「………………はい」
『ばかぁあああああああ』
耳を貫く音波。
「ごめん、なんていうか、
からまれた私のこと助けに来てくれたの」
樹に顔を寄せて携帯の話し口で静流のダメージが軽減するように噛み砕いた。
『なにそれ!警察には行ったの?』
「あー、その辺は帰って来てからにしてくれ」
『無事なの?怪我は?』
「帰って来てから」
『母さん残業だから今いないけど、すぐに電話してね!
すぐ帰って来るんだよ!』釘を刺されて電話を切られた。
「愛されてんね」
若菜は今日初めて笑った。
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