《MUMEI》 ──嬉しい。 僕、 今── 凄く嬉しい。 「ありがとう、芙原さん──」 「‥?」 「嬉しかったから、お礼言いたくなったんだ」 「なッ‥‥‥バッカじゃねーの」 芙原さんのほっぺたが、 ちょっとだけ赤くなったみたいに見えた。 ──気のせいかな‥。 「‥何だよ、見んな」 「──ぁ‥ごめん‥」 芙原さんは、 見つめられるのが苦手。 だから── 僕はあまり横を向けない。 でも、 さっきみたいに気付かない内に見つめちゃってるんだ。 何かに、 引き寄せられるみたいに──。 前へ |次へ |
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