《MUMEI》

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目が覚めた時には、もう11時近くになっていた。


完璧に遅刻だ。


携帯には、バイト先や山下からの着信履歴が、何件も入っている。


「あぁ…もういいや。休も…。」


貴士がバイト先に電話しようとした丁度その時、タイミング良く山下から電話が掛かってきた。



「はい…」


貴士は意気消沈した声で電話に出る。
演技でも何でも無く、本当に疲れ切っていたのだ。


そんな事とは知らない山下

「『はい』じゃねぇよ!
お前、今日何で来ないんだよ!?」

「悪い…ちょっと気分良くなくて…」


山下の声が頭痛に響くのを我慢する。


「だったら電話くらい…」
「本当ごめん…。今日休むって店長に伝えといて…」

早く電話を切ってしまいたかった。


そうしないと狂いそうだ。
一人にさせてくれ…


だが、山下から返ってきた言葉で、貴士は部屋を飛び出した。

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