《MUMEI》
候補者発表
正式な台本が手元に届いた頃


生徒会役員候補者達の名前が掲示板に貼り出された。


(気合い入ってんな〜)


同時に、既に倍率が高そうな役職を狙う候補者達のポスターがあちこちに貼られていた。


しかし、その中には


誰もが会長当選確実と思っていた人物


志貴の名前が無かった。


「何でだ!?」


その事に一番驚いたのは俺ではなく


拓磨だった。


「面倒だからに決まってるでしょ」


当の本人は、至って冷静だった。


「で、でも…」

「やっと先生達も説得したんだから、これ以上言わないでよね」


拓磨の言葉を遮る志貴からは、殺気が出ていた。


(あ、もしかして…)


「最近よくいろんな先生に呼ばれてたのってその話か?」

「そーよ。三学期入ってからもう毎日うっとうしかったわ」

「吾妻高校の生徒会って、そんなに嫌なものなのか?」


中学では生徒会長を自ら立候補してやったと守から聞いていた俺は、志貴が、今回これだけ嫌がる理由がよくわからなかった。


「中学は暇だったからいいの。でも、今はバイトがあるからダメ。生徒会なんてね。結局雑用係みたいなもので、すっごく忙しいのよ」

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