《MUMEI》

ロウソクに火を灯して、

病室の明かりを消した。





歌うのは恥ずかしいから、

代わりに‥

オルゴールを鳴らした。





日向は、

その音を聴きながら嬉しそうに笑ってる。





「‥じゃあ‥吹き消して」

「ぁぁ」





日向が、

ロウソクの火を吹き消した。





「───────」

「どうしたのよ、食べないの?」





ちっちゃいケーキだから、

食べれるはずなのに。





「日向ぁ」

「──えっと‥」

「ぁぁ──」





日向は、

やっとフォークを取った。





「じゃあ、頂きます──」





苺の乗ってる部分を、

ひと口食べた。





「美味しい?」

「──美味しい」





日向が笑ったから、

すっごく嬉しくなった。





「全部食べてよね?」

「──ハイ、姫サマ」





ニッコリしながら、

日向は言った。





「残さず頂きます」





ひと口食べる度に、

幸せそうな顔をする日向。





「──姫サマ」

「ぇ‥?」

「苺──如何ですか?」

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