《MUMEI》

「‥‥‥‥‥‥‥」

‥まだ動悸が治まらない‥。

あの時‥

僕は何故あんなにもどぎまぎしてしまったんだろう‥?

急にお互いの距離が狭まったからか‥?

単に‥

珠季が近かったからか‥?

それとも‥

その両方か‥?

「静瑠」

「!!」

話し掛けられただけだ。

なのに‥

僕は椅子から飛び上がりそうになった。

「な‥何だい珠季──」

「消しゴム貸してくんね‥?」

「ぁ‥‥‥ぁぁ、いいよ──」

ペンケースから

消しゴムを出して彼女に手渡す。

──その瞬間。

僅かに

彼女の手が触れた。

「!──」

反射的に

手を引っ込める。

「?」

珠季が

不思議そうにこっちを見た。

「なぁ」

「ぇ」

「──あんがと」

「‥ど‥‥‥どう‥致しまして‥」

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