《MUMEI》

藤城は、暫く黙って考え込んでいた。



重苦しい空気が、菖蒲の間に流れてゆく…。



『猪俣さんが、そう仰るなら……


決着がつくまで待ちますよ…。』



藤城は低い声で発した。




周囲を取り囲む組員達は、藤城に物言いを付けた男が何者かと密々話していたが…



あっさりと進言を飲んだ藤城の振る舞いに、只者ではないことだけを感じ取った。




そして藤城の言葉に救われた筈の兼松は絶句した。



藤城が桜庭のことを猪俣と呼んだためだった…。

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