《MUMEI》

山下からの電話はこうだ。

『昨日婆さんが今来ててよ…。
お前が何処に居るのか聞いてきてんだよ。
それも凄い剣幕で!
もう俺マジで怖ぇし、店長もお手上げって感じだし…』




貴士がカフェに付くと、確かに老婆がいた。

またカウンターに乗り上げて、中にいる山下と店長を脅すかの如く、「あの若造を出せ!!」と喚き散らしている。


「あ!貴士!!」


貴士に気付いた山下は、すでに半泣き状態だ。


貴士はそんな山下をまるで無視し、老婆を呼ぶ。


「婆さん!!」


すると老婆のギョロ目が貴士を捉えたかと思うと、もの凄い勢いで向かってきた。

「お前!もう時間が迫ってきとるぞ!!
半分、持っていかれとる!」

「は?」


意味が分からない。



「来い!」


老婆は貴士の腕を掴むと、強引に外に連れ出した。


「ちょっと貴士くん!?」

「すみません!今日は休みます!!」


後ろから追いかけてくる店長の声に慌てて返事をし、貴士は、老婆にひっぱられるまま着いて行った。

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