《MUMEI》

「──ぁ、蝶──」

「ぇ、どこっ?」

「向こう行ったみたいだな──」

「〜〜〜‥日向ばっかりずるい〜‥」

「また戻って来るかも知れないぞ?」

「ほんと?」

「ぁぁ」

「戻って来なかったら?」

「そしたら──‥」

「そしたら?」

「ジュースでもプリンでも──好きなの買ってやるから」

「別にいらない」

「ぇ‥」

「いらないから──側にいて」

「那加‥?」

「側にいて。それだけでいいから」





ほんとに、

あたしが望んでるのはそれだけ。





ジュースより、

プリンより──

日向が、

あたしの側にいてくれる事──

それだけが、

あたしの願い。

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