《MUMEI》
残った先生
多目的室に行く途中も、二人は懐かしい思い出話に花を咲かせていた。


その中で、一つ気になる事を園長先生が言った。


「君が知ってる先生、大分減っちゃったかもしれないね。」

「え?」


当日は園長先生を含め、六人の先生がいた。



ドキッとする。



残ってるのは誰なのか?


「まぁ、皆それぞれ理由はあるけど、やっぱり不況の煽りかねぇ。
何人か辞めてしまって…」

僕は呼吸が詰まったような感覚に陥る。


まさか、もうここには…?

気が気じゃなくなった僕は、それとなく訊ねてみた。


「あのっ!…その、僕がいた頃の先生、今は誰が残ってるんですか?」


居てくれ!!


そうでないと、ここに来た本当の意味がなくなってしまうから。


「ん〜、洋介君に…
あ!あとほら!!」


園長先生は一人の女性を指差した。


キッチンの方から出てきた彼女は、両手に買い物袋を提げて、重そうにヨタヨタと僕らの前を歩いていた。


後ろ姿でも直ぐにわかった

その姿を見た瞬間、僕の心臓が堰を切ったように躍りだす。


「お〜い!美奈子ちゃん!」


「はい!」


呼び止められた彼女は、一旦荷物を床に置くと、明るい声で返事をして、僕ら二人の方を振り返った。

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