《MUMEI》
忘れてたバレンタイン
それは、柊とのやりとりの翌日の事だった。


《今年はお前から渡せ。もちろん手作りでな。当日取りに行く》

「… … 何が?」

《…》


(何でため息?)


本気でわからなかった俺は、本気で焦った。


《…明日は何日だ?》

「二月十三日」

《明後日は?》

「十四日。 …て、まさか、バレンタインの、…チョコ、じゃないよな?」

《それ以外に何がある》

「え? だって…普通男は…」

《お前、去年男からもらっただろう?》


(た、確かに)


俺は去年、祐と柊から手作りチョコをもらった。


「でも、去年は…」


『忍が俺にチョコケーキを買わせて、それを二人で食べた』


そう続けようとしたが


《今年は旅行に連れていく暇が無いし、お前も学校があるからな。
俺とお前は一応恋人同士なんだから、一番に俺に渡せ。
…他のヤツにはやるなよ》
「わかった」


(ていうか、元々やるつもりないし)


俺は、去年の柊のように笑い者になる気は無かった。


《それから、二卵性の方の双子の男の方が来ても追い返せ》


(あぁ、そういえば去年祐押し掛けてきて、無理矢理泊まったな)


忍は俺と違い、バレンタインをよく覚えていた

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