《MUMEI》
バレンタイン前日
二月十三日。


志貴は去年と同じ店にチョコを買いに行くと言って、帰っていった。


その日もいつもと同じように部活を終えた俺は、ある人物との待ち合わせの為に、校門にいた。


「祐也、また明日!」

「あぁ」


毎日エイミーと電話をしている頼は、今日も慌てて帰っていった。


「お待たせしました」

「あ…、あ?」


待っていた人物


松本の声に俺が振り返ると


「どーも!」


松本の隣にいる石川が、笑顔で挨拶してきた。


「…どうも」


(何で?)


目で訴えると、松本が答えた。


「くるみちゃんも買い物一緒にしたいって言われて…」

「一緒に手作り頑張りましょうね、先輩!」

「はぁ…」


(まぁ、いいか。買い物位)


俺は石川の勢いに負け


結局三人で、手作りチョコの材料を買いに行く事になった。


最初、手作りチョコについて何の知識もない俺は、柊と祐を頼ったが


『本人にあげるチョコ作ってるとこ見られるの、恥ずかしい』


柊からは、乙女な理由で断られ


『教えるから、泊めて?』


祐は下心があったから、こちらから断った。


そして俺は知り合いで一番無難な松本を頼った。

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