《MUMEI》
選挙のお礼
(ん? あれは…真司と、…渡辺、か?)


店内は人が多くて、その中でも真司は目立っていたが、渡辺はすぐにはわからなかった。


「祐也」

「こんにちは、田中君」


二人は俺と目が合うと、すぐにこちらにやってきた。


「何買ったんだ?」

「…別に」


(言えるか)


俺は手作りトリュフセットが入った袋を後ろに隠した。


「そっちは?」

「ラッピングの材料買いにきたんです」

「俺の奢りで」


渡辺が持っているカゴには、確かにバレンタイン用と思われるラッピングの材料があった。


「何で、真司の奢り?」

「選挙のお礼」

「いいって言ったんですけど…」

「でも何かしたかったから」

「でも、何でこれ?」

「…去年、彼氏にセンス無いと言われまして…」


(あぁ、なるほど。真司、センスありそうだもんな)


納得した俺は、会計に行く二人を見送り、松本と石川の様子を見に行った。


「決まったか?」

「「はい」」


二人は揃ってレジに向かった。


ラッピングコーナーにはまだまだたくさんの女の子達がいて


その中に、俺と真司の知り合いがいたが、俺は気付かなかった。

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