《MUMEI》

俺が笑って、

こいつも笑顔になれんなら──

笑わねー訳いかねーもんな。





「先輩って──可愛いですね、笑った顔──」

「んぇ‥?」





か‥

可愛い‥?





んな事言われたの初だな‥。





「言われないですか?」

「部長からは──ガキっぽいってよく言われるけど──」

「それって──いい事ですよね」

「いい事‥‥‥?」

「私はそう思うんです。お兄ちゃんも、時々やんちゃな所とかいいなって」

「桃史って‥昔からああなのか?」

「はい‥、家が呉服屋で‥両親がいつも忙しかったから──お兄ちゃんが遊び相手になってくれてたんです」

「そーなのか──」





それであいつ──





『藍伊に一歩でも近付いてみろ? オレが黙ってないからな?』





あんな事言ったりしてたんだな‥。

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