《MUMEI》

「甘え過ぎてました……、俺は病気だからとか、いつの間にか誰かに頼るのが当たり前になっていて、人の優しさにのしかかり過ぎていた……


その時その時の感情に忠実に揺れて、みんなにそれを付き合わせて……」



「……、…」



加藤君はギュッと目をつぶり、頭を左右に揺らし、一呼吸置いて、




俺をじっと見つめてきた。









「 気合い入れて貰えませんか、伊藤さん」













「あれ?秀幸!」

「お、裕斗…」

病院の入口で鉢合わせした俺達。




すっかり外は暗くなっていた。


「飯は?」



「食ったよ、秀幸は?まだなら軽く付き合うけど」

「あー、まあ、いいよ…」









加藤君が寝そべっていたベンチに二人並び、仲良く煙草を吹かす。




木々の間に刺さる照明が幻想的に裕斗を照らす。


あんまりにも綺麗でその横顔に見とれていたら、クスクス笑いながら裕斗は俺に寄りかかってきた。


「本当マジで秀幸は俺が好きなんだなー」
「そりゃー好きだよ、愛してるよ、可愛いくって可愛いくってメロメロですわ」

肩を抱きながらそう言うと裕斗は擽ったげに笑った。
俺もなんだかつられて笑ってしまって、
だけど自然に唇が近づきあい、それは柔らかく重なり合った。







「今日も泊まりか?」



「…うん、ごめん…」



「いや、俺はいーんだ、加藤君が望むなら傍にいてやれな、今日会ってだいぶ弱ってんのわかったし、友達としてやれるだけの事はしてやれ、な?」




あ、今の本心ですよ俺…。




いつも心ん中で、行くなよ、おまえは誰のモンだって突っ込み入れてたのに…





俺も加藤君と一緒で、いろいろと踏ん切りつけれたのかもしんねえ。






もう、加藤君にも、




潮崎君にも、






俺は妬き持ちを妬く事はないだろう…。





ベンチから先に立ち上がる裕斗に俺はバッグからアレを出した。






「な、泊まりならこれ必要だろ?」




「あ、あ〜〜〜ッッ!、み、見た?見たのかよ秀幸ィッ!」





慌てながら俺からノートを奪い取る裕斗。




「あ〜もうバッチリみたぜ、
そりゃ〜誰に向かって書いてたんだ?

随分メルヘンで切ない詩ばっかだけど!」



「あ〜もう最悪だあ!恥ずかしいよ〜もうっ!」




照れながらノートで俺の頭をバチンバチン叩く裕斗。



俺は笑いながら立ち上がり、そんな裕斗をきつく抱きしめた。




耳元に






「俺の事そんなに好きか?」




って囁いたら





裕斗は小さく頷いた。

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