《MUMEI》
「甘え過ぎてました……、俺は病気だからとか、いつの間にか誰かに頼るのが当たり前になっていて、人の優しさにのしかかり過ぎていた……
その時その時の感情に忠実に揺れて、みんなにそれを付き合わせて……」
「……、…」
加藤君はギュッと目をつぶり、頭を左右に揺らし、一呼吸置いて、
俺をじっと見つめてきた。
「 気合い入れて貰えませんか、伊藤さん」
▽
「あれ?秀幸!」
「お、裕斗…」
病院の入口で鉢合わせした俺達。
すっかり外は暗くなっていた。
「飯は?」
「食ったよ、秀幸は?まだなら軽く付き合うけど」
「あー、まあ、いいよ…」
▽
加藤君が寝そべっていたベンチに二人並び、仲良く煙草を吹かす。
木々の間に刺さる照明が幻想的に裕斗を照らす。
あんまりにも綺麗でその横顔に見とれていたら、クスクス笑いながら裕斗は俺に寄りかかってきた。
「本当マジで秀幸は俺が好きなんだなー」
「そりゃー好きだよ、愛してるよ、可愛いくって可愛いくってメロメロですわ」
肩を抱きながらそう言うと裕斗は擽ったげに笑った。
俺もなんだかつられて笑ってしまって、
だけど自然に唇が近づきあい、それは柔らかく重なり合った。
▽
「今日も泊まりか?」
「…うん、ごめん…」
「いや、俺はいーんだ、加藤君が望むなら傍にいてやれな、今日会ってだいぶ弱ってんのわかったし、友達としてやれるだけの事はしてやれ、な?」
あ、今の本心ですよ俺…。
いつも心ん中で、行くなよ、おまえは誰のモンだって突っ込み入れてたのに…
俺も加藤君と一緒で、いろいろと踏ん切りつけれたのかもしんねえ。
もう、加藤君にも、
潮崎君にも、
俺は妬き持ちを妬く事はないだろう…。
ベンチから先に立ち上がる裕斗に俺はバッグからアレを出した。
「な、泊まりならこれ必要だろ?」
「あ、あ〜〜〜ッッ!、み、見た?見たのかよ秀幸ィッ!」
慌てながら俺からノートを奪い取る裕斗。
「あ〜もうバッチリみたぜ、
そりゃ〜誰に向かって書いてたんだ?
随分メルヘンで切ない詩ばっかだけど!」
「あ〜もう最悪だあ!恥ずかしいよ〜もうっ!」
照れながらノートで俺の頭をバチンバチン叩く裕斗。
俺は笑いながら立ち上がり、そんな裕斗をきつく抱きしめた。
耳元に
「俺の事そんなに好きか?」
って囁いたら
裕斗は小さく頷いた。
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