《MUMEI》

「安西、いい家庭築き上げそう。」


「……どうでしょうね。親離婚してますから、同じことしてしまったりして。」


「卑屈になるなって。安西は傷付いた分を相手に返すようなことしないじゃないか。」


「……先輩が思ってるような人間じゃないです。いつも人の顔色窺って、嫉妬もします。」

嫌なこと思い出したのか、安西、元気ないな……


「人間なんだから当たり前だろ。分かっているなら直す努力だって出来る。」


「励ますつもりが励まされてしまった……」

少しだけ、笑ってくれた。


「そうやって素直にさらけ出してくれる安西いいと思うよ?気持ちが通った気がする。」


「先輩だからです……」

安西、照れてるのか、目を合わせようとしない。
さっきの話題を引きずっているせいか、しょんぼりしていて可愛い。


元気出しな?
……と、言いかけて止めた。
頭を撫でてやる。
大人しく安西は俺を見つめている……安西も俺と同じで、積み重なって独りじゃ抱え切れない負担があるんじゃないかな。
俺じゃあ、どうしようもないのかな。
なんか、そうやって放っとく俺は寂しい人間だ。










「…………安西、俺と付き合ってみる?」


「え?」

聞き返された。


「へ?」

俺も聞き返してしまった。

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