《MUMEI》

「俺ン中秀幸でいっぱい…」


「裕斗…」

「俺秀幸に出会えて本当によかった、
秀幸…………


絶対に俺の事離さないで…、俺も秀幸の事絶対離さないから」


「…、ッ、−−−あたりめーだ、離すもんかこんにゃろー」

裕斗の、ワックスでごわつく髪を撫で、俺達は深いキスをした。





パサリと落ちるノート。




慣れた、愛しい温もり。







もうすぐ、俺達が結ばれてから一年になる。








いろいろあったけど







これからもいろいろあるんだろーが










この温もりは













絶対に








手離さねえ…













笑顔で俺達は別れて俺は車に乗り込んだ。



俺は助手席にノートをバサリと置く。




秀幸も俺に書いてなんて言うもんだから預かっちまったが…


−−−恥ずかしい。




恋人に詩を贈るなんざ普通やらねえからなあ…


下手に書いてそれをネタに笑う裕斗の姿も何となく目に浮かぶ。



「やれやれ、参ったなあ〜…」


エンジンをかけ、ナビをテレビに変える。
ちょうど、ニュースが出た。





高速道路でトラックが車に突っ込み、若い兄弟が亡くなった事を告げている。






先日通った東名だ。



尾張小牧じゃ名古屋に近い……。



「……帰りますか」


俺はナビに切り替え、車を発車させた。

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