《MUMEI》 「──ぁ‥ちゃんと出ているみたいだね」 「───────」 「珠季?」 「アタシな、ガキの頃これ担いだ事あんだ」 「!?」 「1人でじゃねーよ、大人に交じって」 「そ‥そうか‥」 その頃からお転婆だったんだな──。 「で、町練り歩いて──参加賞とか何とかでイカ焼きもらって」 「それでイカ焼き好きになったのか‥?」 「そーでもねーけど」 珠季は呟いて 神輿を懐かしそうに見つめていた。 あんまり彼女が浸っているものだから 邪魔をする訳にもいかなくて‥ 僕は暫く彼女の横で 大人しくしていなければならなかった。 「──ぁ‥悪ぃ、他の屋台見てくんだったよな」 「いいよ、離れたくなるまで待っているから」 「そーか‥?」 「ぁぁ。だから気兼ねはしなくていいから」 前へ |次へ |
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