《MUMEI》 水上祭水上祭は雨乞いが基になったと伝えられていて、飢饉による犠牲を少しでも減らせるように川下へ人型と供物と流して祀るので或る。 「なあ、飢饉で犠牲になった魂も川に流すんだろう。流れた魂は循環して何度も何度も還るのだろう?艶子のように……」 先生は最近、魂の行き場や地の国なんて謂う死の世界に夢中だ。 「にゃああ。」 そして此の艶子にも御執心で或る。 私は其れが面白くない。 「艶子の毛並みは心地良いね。」 首の後ろを撫でられて、猫は先生の膝に片手を乗せる。 媚びを売るような甘えた鳴き声に私の心中は穏やかで無い。 「堂に呼ばれてるのでしょう。艶子を連れてちゃ示しがつきませんからね。」 「連れてちゃ駄目なのか?」 「当たり前です!」 猫を引き連れた小説家なんて格好がつかない。 前へ |次へ |
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