《MUMEI》 兼松は〆華の最後の手札を「菊のカス」と睨んでいた。 だとすれば「盃」は確実に〆華の手に渡り、その出来役にタネ(1文)は完成する。 勝負の行方は、返しの札でもう1文とれるか否かにかかっていた。 即ち、〆華が勝つか引き分けに持ち込む確率は、山札の残り枚数に含まれる有効札の数… …つまり9分の4だ…。 兼松は生唾を飲みながら〆華の手札の茶色い裏地を睨んだ。 周りの男達も二人の緊張感にあてられ、押し黙って座布団の上を覗き込んでいる。 「こいこい」のルールを知らないとおぼしき若い組員が、側にいた男にヒソヒソと教えを請うていた…。 前へ |次へ |
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