《MUMEI》
サッカー部の部室
昼休みになり、俺は志貴に『真司と話があるから』と告げて弁当を持って教室を出た。


真司は毎回弁当の他に購買でパンを買うから、部室に着いたのは俺の方が早かった。


(中で待つか)


俺はゆっくりとドアノブを回した。


『鍵、開いてるから』


購買に行く真司が言った通り、鍵は開いていた。


「意外と綺麗だな」


正直な感想をポツリと述べた時


「マメに掃除してるからな」


後ろから、真司が現れた。


「とりあえず、昼飯食べるか」


真司の提案に、俺は頷いた。


それから俺達は、部室の隅にあったパイプ椅子と机を中央に移動させ、昼食をとった。


「最近特に凝ってるな」


真司が言うように、祐が毎日作って届けてくれる弁当は日に日に豪華になっていた。


「『卒業したら、渡せなくなるから』らしい。自由登校だし、別にいいんだけどな」


いくら断っても、祐は毎日弁当を届けにきた。


「愛だな」

「真司の弁当だって…」


言いかけて、俺はやめた。


真司の弁当は、いつもは長谷川の手作りだが、今日は


「詰まってるよ、母の愛が」


真司はサラリと言って、母親が作った弁当を普通に食べていた

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