《MUMEI》
優しさ







「全く…」




俺は眠る裕斗に毛布をかけ、エアコンの設定を二度上げた。


来たかと思ったら
備え付けのシャワーを鼻歌混じりに浴びだし、相変わらずバッグに忍ばせてきた缶ビールをグビッと飲んで、ソファにひっくり返って猥褻な話をしたかと思えば



爆睡してしまった。



俺は指先で、だらしなく垂れた唾液を拭ってやる。





その指をぐっと握り込んで…






俺はひざまずき、裕斗の唇に、



唇を重ねた。



柔らかい、


暖かい感触…。



ゆっくりと離れ、また唇に触れる。






肩に触れ、掴まるとあったかくて、愛しくて……






その温もりは、俺の胸の中をせりあがらせて、目頭を一気に熱くさせた。





−−−最後のキスだから。






起きるなよ






今だけ、今だけだから……。






次に目覚めたら、また元のダチに戻るから





ダチでいてくれるよな?





ダチでいて欲しい









俺を見捨てないで








見ていて欲しい










強くなるから










頑張って






強くなるから







今、数分だけ甘えさせて








この数分を想いながら








俺は生まれかわって







強くなるから…

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