《MUMEI》
優しさ
▽
「全く…」
俺は眠る裕斗に毛布をかけ、エアコンの設定を二度上げた。
来たかと思ったら
備え付けのシャワーを鼻歌混じりに浴びだし、相変わらずバッグに忍ばせてきた缶ビールをグビッと飲んで、ソファにひっくり返って猥褻な話をしたかと思えば
爆睡してしまった。
俺は指先で、だらしなく垂れた唾液を拭ってやる。
その指をぐっと握り込んで…
俺はひざまずき、裕斗の唇に、
唇を重ねた。
柔らかい、
暖かい感触…。
ゆっくりと離れ、また唇に触れる。
肩に触れ、掴まるとあったかくて、愛しくて……
その温もりは、俺の胸の中をせりあがらせて、目頭を一気に熱くさせた。
−−−最後のキスだから。
起きるなよ
今だけ、今だけだから……。
次に目覚めたら、また元のダチに戻るから
ダチでいてくれるよな?
ダチでいて欲しい
俺を見捨てないで
見ていて欲しい
強くなるから
頑張って
強くなるから
今、数分だけ甘えさせて
この数分を想いながら
俺は生まれかわって
強くなるから…
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