《MUMEI》

水を打ったように静まりかえる菖蒲の間…



勝負の舞台となる小さな座布団の上に…



「猪」を含む2枚の"萩"が、ずっと前から晒されていた。



言わばそれは、〆華と兼松のどちらに転ぶか分からない、言わば宙に浮いた場札だった。



方や前巡に〆華が取った「紅葉に鹿」は、既にもう一組の「紅葉」が兼松の取り札にある以上、必然的に残りの合札を持っている〆華の手の内にあるに等しい。



このような場合「萩」を先に取るのが定石だった。



兼松は、有り得ない"切札"を隠し持っていた、芸妓のしたたかさに絶句した。

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