《MUMEI》

首塚斬士郎の家に転がり込んで来てしまって早一週間。……ぼくはぼんやりと、祭の空気を味わいながら歩いてみた。

「すいません。」

ぼんやりし過ぎて肩がぶつかった。


「見ない顔だな。」


「はい、物書きの先生の家に居候させて貰ってるんです。」


「ふうん。あんた……合わないね。」


「合わない?」


「庶民的だと謂う意味でだよ。」

誉められた……のか?


「有難うございます?」


「愉しんでおいで。水上姫の舞いを見ると良い。」

水上祭……聞いたことは或る。
好奇心も或るが、さ迷っているだけもなんなので見てみようか。

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