《MUMEI》

勝ちを投げうっても一人の男を救おうとする女の表情は、菩薩のように穏やかだった。



しかし兼松にとっては、そんな女の好意は、間の抜けた偽善行為にしか映らななかった。



(…この女……


…やはり、儂が猪俣の女を殺した張本人ということを知らぬのか…?


…だとしたら、人が良いにも程があるな…。)



兼松は、心の中で〆華を嘲った。





万死に一生を恵まれた恩義も忘れて…。

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