《MUMEI》

「……いらっしゃらないんですか?」

猫の鳴き声はしている。
蒸し暑い夜だ。
祭の後、先生の家に忘れ物を取りに帰ってたいした時間は経っていない筈、鍵は空いていた。




恐る恐る、襖を覗く。


襖の隙間から裸体が見え隠れする。


何度も謂い聞かせた。

何も見なかった。

何も聞かなかった。

何も知らなかった。

私の頭は混乱している。



先生がまさか、彼と……嘘だと謂ってくれ。

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