《MUMEI》 視線を感じなくなって やっと僕はほっとした。 幸い珠季は また花火に釘付けになってくれている。 僕は しきりに手を伸ばしては引っ込めてを繰り返していた。 触れる‥ あと一歩の所で勇気が出ない。 周りの人達には‥ どんな風に見えているんだろう‥? 滑稽か はたまた変か‥。 ──どっちにしてもだ。 僕は 彼女の手を握りたい。 今僕が望むのは それだけ。 「‥‥‥‥‥‥‥」 手を‥ 伸ばす。 出来るだけ‥ 近付ける。 ‥心臓が‥ 煩い。 花火の音なんて物じゃない。 ‥恐ろしく煩い。 ──6発目の花火が上がった時。 僕の手が 彼女の手に‥‥‥ ──触れた。 前へ |次へ |
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