《MUMEI》

‥驚いた。

てっきり僕は

嫌がられたんだと思っていたから。

いきなり手を握られたら

少なからず驚くだろう。

幾ら

恋人同士だとしても。

だから‥

恐かったんだ。

彼女を驚かせてしまうのが。

けれど

彼女は驚かなかった‥

ぃゃ、

驚いていたのかも知れない。

「珠‥‥‥」

言いかけて

止めた。

このままでいい──

そんな気がしたから。

ただ

手を繋いで

花火を見て。

何でもない事かも知れない。

けれど──

いいんだ。

これで。

そう

このままでいい──

このままで。

──楽しいんだから。

だから今は

このままでいよう。

暫くの間──。

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