《MUMEI》
決断
「そうですね、いつまでも病人やってる場合じゃない」
「「惇!!」」
むくりと起き上がる惇。そして俺達を交互に見た。
「起きてたのかよ…」
「あたりめーだろ、耳元でごちゃごちゃ言われたら嫌でも目が醒める。
内緒話したいならさ、さっきの隆志とみてーに家族室か、下に行くとかすればいーのによ…」
いつもの、
……いつもの、
俺の知ってる
惇だ
「だ…、だって外寒みいもん、家族室もな〜んかお化け出そうでおっかねーしさ!
つかよ〜、俺がな〜んで惇にいちいち気い使ってコソコソしなきゃなんない訳?」
「ちょっ…坂井君!」
俺の物言いに慌てだす平山さん。
惇は、大丈夫だからといいたげに平山さんを見つめ、平山さんは口をつぐんだ。
「…だよー、俺に気い使うなんて裕斗には似合わねーし!
つかおい!
兄貴に何があった?
……正直に言え。
大丈夫だから……
絶対に……
俺には……」
惇はふと瞼を閉じて、
そして開いた。
力強く、俺を見据えてきた。
「−−俺の事、隆志がいつでも後ろから支えてくれている
だから大丈夫。
……言って欲しい。
もう、大丈夫、
俺は
自分から逃げない」
「…惇…」
真っ直ぐに俺を見つめる惇からは、
弱さは一切消えていた。
「ダチなら、言ってくれ、裕斗」
惇はそう言って、俺の手を両手で強く握ってきた。
惇の目には…
もう、迷いの色は
なかった。
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