《MUMEI》
興味がない
もう既に冷めきってしまった料理を温めている間、加奈子は会話を捜していた。
何かしゃべらないと…
名前…そうだ名前だ!!
「ね、あなた名前何ていうの?」
あ〜、やっと沈黙破れたよ
「名前?」
「そ。私加奈子、よろしくね。あなたは?」
「…適当に付けて。」
「は?」
男のあまりの無愛想な返事に思わず喧嘩腰になる。
「適当にってねぇ、名前位教えてくれたっていいじゃない!!」
「じゃあ…少年Aでいい。」
コイツ…ほんっとムカつく!
「あんた、何でそう無愛想な訳?女の子にモテないでしょ?」
加奈子はププッと笑い、馬鹿にするように言う。
「ほ〜ら、何にも言い返せないってことは…」
「俺、女に興味ないし。」
チッ。
絶対負け惜しみだ!
「へぇ。じゃあ男が好きなんだぁ?もしかしてホモってやつ〜?」
加奈子は嫌味たっぷりの言い方で男を挑発した。
しかし男はそれを無視するかの様に立ち上がり、キッチンへ入ってきた。
テーブルには鍋料理以外、既に準備が整えられていた。
「あ〜腹減った。」
男は椅子に座ると、一人食事をし始めてしまった。
「あぁ!ちょっと何一人で食べちゃってるわけ?っつか私の話無視!?」
信じらんない!
なんて自分勝手な…
「男、ホモじゃないよ。」
遅っ!!
今更返事かよ…
「女に興味がない、男にも興味がないじゃあんた、友達いないでしょ?実は。」「…だね。」
男はモグモグしながら、素っ気なく答える。
「それって寂しくない?」
温め終えた鍋をテーブルに置き、加奈子も食事をし始めた。
「寂しい?」
「うん。だってね、一人ぼっちって事でしょ?人間、一人じゃ生きていけないわよ?」
な〜んて、ちょっと説教してみたりして。
私良い事言うじゃん!…って…あれ?
「どうしたの?」
さっき迄、箸が進んでいた男の手が急に止まった。
「俺は…」
声が微妙に震えている。
「俺には‥誰も必要ない」「強がっちゃって。」
「そんなんじやない。」
じゃあ何なのよ?
「はぁ、分かってないなぁ。だから〜人間はぁ‥」
「分かってないのは、あんたの方だ…」
男は静かに言う。しかし、その声には明らかに怒りが込められていた。
「何?どういう意味よ?」
「俺は…
俺は
人間じゃないんだよ…」
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