《MUMEI》
気配り上手
「あの、ここ、最近できたから、まだあまりうちの生徒も知らないと、…思います」

「俺も知らなかった」


確かに、店内にいるのは家族連れが多かった。


「夕飯、どうしますか?」

「帰ってから食べるよ」


今日の俺の夕飯も、配食サービスだった。


届けるのは祐で


俺がいなければ、屋代さんか大家に預けて帰る事になっていた。


「じゃあ、飲み物だけ、…奢らせて下さい」

「その位、別に…」

「お願いします」


そして長谷川は、二人分のドリンクバーを頼み


俺の分の飲み物も持ってきてくれた。


(こういう気遣いできる所を、果穂さんは気に入ったんだよな)


長谷川は小学生の頃から地元サッカーチームのマネージャーをしていて


自然と相手を気遣う事ができ


好きな相手をサポートする性格になっていた。


そこに、果穂さんは目を付けたのだった。


だから、今回のように、サポートし続けた真司を叩いたり、自分の感情をぶつけるという事は、長谷川にしてはかなり珍しい言動で


「本当に、田中先輩まで巻き込んで申し訳ありませんでした…」


長谷川自身が一番戸惑っているように見えた。

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