《MUMEI》
即答
「それは無いし、もう花嫁候補は無理だとわかってます」

「『無い』っていうのは、真司と別れるつもりは無いって意味?」

「別れたがってるのは真司で私ではないです!」


俺の確認に、長谷川の声が大きくなった。


「…すみません」


気持ちを落ち着けるように、長谷川はホットココアを飲んだ。


俺は、温くなっていたコーヒーを飲みながら、その様子を見つめ、考えた。


(つまり、長谷川はまだ真司が好きなんだな)


問題は、今の


サッカーの事しか頭にない真司についていけるか、なのだ。


(俺は、どんな旦那様でも大好きだったけど)


仕事が忙しくて時々留守にしても、俺は旦那様が好きだった。


今でも、愛している。


(でも、それってちゃんと愛されてたからだ)


旦那様が自殺したあの日まで


正確には、俺がこんな


大人の声になるまで


俺は、旦那様に愛されていた。


自惚れではなく、本当に。


それが、離れている時の俺の支え


そして、愛されたあの日々があるから


旦那様が望むように


俺は、今、生きている。


(普通かはわからないけどさ…)

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