《MUMEI》

「僕が持ちます。」


美奈子先生が、また重そうな袋を持とうとしたから、それを横から奪い取る。


「一個持つよ。二つはキツいでしょ?」


袋の中身は飲み物や、お菓子やらでいっぱいだ。


「いえ、これくらい楽勝です!」


確かに…正直重いけど、頼りになる男だと思われたい。

僕は、涼しい顔で先生の申し出を断った。


「ありがとう。フフ…。」

「何です?」


「順平君、本当に大人になったなぁって。
女の子にこんな気遣いできるんだもの。

あ…、先生はもう順平君からしたらおばさんか。」


「そんな事全然思ってないです。」


先生は笑っていたけど、僕は真剣に否定した。


確かに、僕と先生は20歳も離れているし、当時25歳だった先生も今や45歳だ。

世間からしたら、おばさんかもしれないけど、僕にとっては一人の女性だから…

「先生は、昔と変わらず…その…か…可愛いです。」

顔が熱くなる。


「アハハッ!お世辞でも嬉しいわ。」


「いえ、本当に。」


もう、タイミングはここしかないと思った。


「先生……」

「ん?」


「僕がここを引っ越す前に言った…」


「あ!!美奈子先生だぁ!」


男の子の元気な声が、僕の声を遮った。

気付けば、もう多目的室に着いていたのだ。


言う決意をしていた分、途中で邪魔された僕は、一気に脱力感に襲われた。

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