《MUMEI》

「はるちゃんどうしたの?」

かなたが後から女子から預かったという俺の分のチョコを持ってきてくれたが、それを「やるよ」と言ってかなたのベッドに置くと、あの子から貰ったプレゼントの包みを開けて中を確かめた。

「お前ら凄いなぁ…俺はさっきのかなたからのだけだぜ」
「見た目が恐いから、誰も近づかないんだろ…」
「はい、あーん♪」

何故か部屋にいる武の奴が、スケスケなワンピースを着たかなたを膝の上に載せながらチョコを食べさせてもらっていた。

「おい、ちゃんとカードとか見てやれよ、ほら、はるかの奴みたいにさ」
「俺のは友チョコだもん、くれた子も知ってるしさー…はるちゃん?」

あの子がくれたオレンジ色の包装紙で包まれたプレゼントを開けてそこに入っていたカードを見てみると、そこには『あなたのファンです』とだけ書かれていて、どこを見ても名前が書いてなかった。


「はぁ…」


中を見れば彼女の名前とか何か分かるかと思ったんだが…彼女が奥ゆかし過ぎて何も手がかりが無い、というのが分かると一気に気持ちが重くなった。

「…もしかしてはるちゃん、それは特別なチョコなの?」

そう言って武の膝から降りたかなたが俺の側に駆け寄ってきて、俺の持っていたカードを見ると俺と同じようにため息をついた。

「俺、はるちゃんの気持ち分かるよ…だって双子だもん」

双子だからって…。

でも、かなたなら分かってくれるような気がした。


「はるちゃん、それって直接貰ったんでしょ、その子の特徴とか分かる?」
「白くて小さい…って、お前聞いてどうすんだよ」
「女子校に潜入して探してくる!」
「えっ!」

突然何を言い出すのかと思ったら、いつも通りバカな事を言ってきた。

「あっちにはウチと同じくらいの人数の女子が居るワケだし、それに一貫校だぞ、人数も多いし…」
「でも制服で小中高校生かぐらいは分かるでしょ、向こうに友達も居るし大丈夫だよ」


……かなたなら出来るかもしれない…。

  

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